新築から2年半、南面の庭で順調に生育してきたトクサが突然の全滅。ものの見事に茶色く立ち枯れです。
急遽、植木職人に来てもらい原因を調べた結果、枯れた原因は水切れと判明。しかし、2年半無事に育ってきただけに「なぜ今更?」という疑問が残ります。
実は、この立ち枯れの背景には、植え付け場所にまつわる少し複雑な事情が潜んでいました。
今回の記事では「丈夫なトクサが枯れるほどの水切れはなぜ起きたのか?」植木職人の説明を踏まえて紹介します。
トクサの話に先立ち、簡単に我が家の庭の紹介です。
建物の南側に広さ50平米の庭があり、紅梅やヤマボウシ、オタフクナンテンなど和の植物が並びます。
50平米のうち道路に面した10平米は法面。土留めブロックを設置して土を入れ平らに均す提案もありましたが、法面をそのままに自然なオープン外構を選択。
土の流出防止と道路からの視線対策で、目隠しフェンスの代わりに70株以上のトクサを植えました。
空に向かって伸びるトクサは清々しく、紅梅やヤマボウシと相まって和風のオープン外構がお気に入りでした。
根本的な理由は「水切れ」
植木職人が見た結果、トクサが全滅した理由は「水切れ」。つまり乾燥で枯れてしまったということです。
トクサはスギナと同じ仲間でとても生命力の強い植物。土の中に大きく広げる地下茎で水分・養分を蓄えるので、暑さや寒さの影響を受けにくいことが強さの理由の1つです。
「植えてはいけない植物」として紹介されることも多く、数m離れたところから突然顔を出すこともあります。
そんな丈夫なトクサが枯れるほどの水切れがなぜ起こったのか?
理由1 法面は渇きやすい
一番の理由は植えた場所の特性です。南側の道路に面した石垣上の法面ですが、法面部分は次の2つの理由から「平面部よりも渇きやすい」そうです。
土が少なく保水力が弱い
法面が乾きやすい理由の1つ目は「法面は保水力が低い」ということ。
法面を断面図で確認すると、法面は表層部分の土量が大幅に少ないことがわかります。
雨や水撒きをすると地表から浸透した水分は土中で蓄えられるます。土の量が少ない法面は保水力が弱くなります。
根を深く張る植物であれば地中深くの水分を吸い上げることができますが、トクサの地下茎は地中20~30cmのところで広がります。
保水量が少ないため、十分に水分を吸い上げられなかったと考えられます。
水が流れやすく浸透しにくい
もう1つ法面が渇きやすい理由は、水が地表流れやすく土中まで浸透しにくいこと。
水が土に染み込むには一定の時間が必要ですが、斜面になっている法面の場合、水は染み込むより先に斜面を伝って下に流れてしまいます。
このため、法面部の表面は湿っていても、地中まで水が届いていない可能性もあります。
トクサの根が広がる地中20~30cm付近だと、先ほどの保水力の低さと相まって、体積あたりの水分量はかなり少なくなるはずです。
理由2 根止め板で鉢植え状態
渇きやすい法面に加えて、水切れに大きく影響したと考えられるのが「根止め板」の存在。
地下茎が広がり過ぎないように、法面と平面の境目にあぜ板(樹脂製で高さ40cm程度)を埋め込みました。
トクサの地下茎の広がり抑えてくれてましたが、一方で、トクサが水を求めて広がることも阻害します。
この結果、トクサは鉢植えに植えられたのと同じ状態。広く水を求めて広がれる地植えと違って、鉢植え並みにこまめな水やりが必要になります。
理由3 連日の猛暑日がダメおし
保水力の弱い場所に閉じ込められた形のトクサですが、そこへ連日の猛暑日が襲い掛かります。今年の夏は57日連続真夏日で記録を更新したそうです。
南面の朝から夕方までしっかり日が当たる場所なので、多少の表面の水分はあっという間に蒸発。
連日の猛暑で気にはなっていましたが、昨年の夏は水遣りなしでも乗り越えられたので少し多めに水を撒く程度。油断していました。
今思えば、昨年の夏も茶色く立ち枯れたトクサもありました。昨年の時点でかなり厳しい環境だったのかもしれません。
環境に合わせた庭づくりが重要
今回の一件を通じて改めて感じたことは、場所ごとの環境を理解して植物を選ぶことの重要さ。
もし、ブロックで土留めして法面を平面にしてからトクサを植えていたら、今回とは違う結果になっていたと思います。
今年の夏、トクサが枯れてしまった理由をまとめます。
- 土が少なく保水力が弱い場所に植えた
- 水が流れやすく浸透しにくい場所に植えた
- 根止め板で広く水を求めて根を張れなかった
- 昨年よりも暑い日が多く水不足に陥った
法面は保水と排水の両立を
法面に植物を植える際は保水性の確保が重要だとわかりました。一方で、法面下部に水が溜まる状態だと根腐れのリスクも出てきます。
最近はロックガーデンも人気ですが、石を配置すると水の流れを阻害するので、法面でも水が地中に浸透しやすくなります。
この相性の良さに加えて、手軽にDIYで庭づくりができる点もメリット。検討する価値のある庭の作り方だと思います。